退職を引き止められて、退職手続きが難航することは珍しくありません。ですが、できることならやんわりと断って、スムーズかつ円満に退職したいですよね。
そこで、引き止めにあわないための退職を切り出すときのポイントと、引き止められた場合の対処法について、施工管理専門のキャリアアドバイザー・宮原泰成氏にお話を伺ってきました。
退職を切り出すときのポイント
上司に退職を切り出す際、引き止めによって退職交渉が難航してしまわないために、発言内容としてこちらの3つのポイントを意識しましょう。
ここからは、各ポイントについてくわしく説明します。
1.退職意志の固さを示す
退職を切り出すときに最も大切なのは、すでに退職を決意していると感じてもらうことです。
このため、「退職するか悩んでいて……」などと相談ベースで切り出すのはNG。「◯◯◯の理由で転職を決めました」のように、決定事項として伝えるようにしましょう。
退職の意志が覆らないことを示すために、たとえば配偶者をはじめとした家族がいる場合は、「家族も転職に賛成している」と補足するのも効果的です。
2.退職理由は、転職して実現したいことを伝える
退職理由は、転職して実現したいことを伝えるのが強い引き止めに合わないためのコツ。その理由なら転職も仕方ないと感じてもらえるよう、「かねてから興味があった◯◯◯の経験を積みたい」など、現職では叶えられない仕事に関する希望を伝えるようにしましょう。
なお、本音の退職理由が職場環境や待遇への不満だったとしても、それを伝えるのはご法度。「給料を上げる」「残業を減らす」といった引き止めに合う可能性が高いだけではなく、トラブルに発展して退職交渉が長期化するリスクもあります。
退職理由の伝え方をくわしく解説!
3.転職先の会社名は伝えない
すでに転職先が決まっている場合でも、具体的な会社名を伝えるのは避けましょう。
転職先がわかると、「それならウチのほうがいいんじゃない?」のように引き止めの余地ができてしまいます。もし会社名を聞かれた場合は、「事情があり会社名はお伝えできませんが、同じ業界内で別分野の会社です」のように、ぼかして答えるようにしましょう。
引き止められた場合の対処法
引き止められた場合、どのように対処すればスムーズに退職できるのでしょうか。よくある引き止めのパターンと、パターン別の対処法をまとめました。
気になるパターンにジャンプ!
【パターン1】給料や働き方の改善を提案される
給料や働き方の改善を提案された場合、まずはその場でお礼を伝えて再検討する姿勢を見せたうえで、数日後に「転職の目的は待遇の改善ではなく、仕事面での希望を叶えることなので、退職したい」と改めて伝えるのが効果的です。
一度持ち帰ることで、上司からの提案を真摯に受け止めていることが伝わるため、その場で切り返すよりも好印象を与えられるでしょう。具体的には、下記のような伝え方が理想です。
伝え方の例
▼給料や働き方の改善を提案されたタイミング
「そのようなご提案をしてくださり、ありがとうございます。しっかりと検討したいので、少しお時間をいただけないでしょうか」
▼数日後
「検討したのですが、やはりかねてから興味があった◯◯◯の経験を積みたいという気持ちが強く、退職したいと考えています」
【パターン2】別部署への異動を提案される
希望する仕事に近い部署など、別部署への異動を提案された場合も、パターン1と同じくその場ではお礼を伝えて再検討する姿勢を見せ、数日後に改めて退職意志を伝えるのが効果的です。
希望が叶うような提案をされた場合は、明確な理由をつけて断りづらいため「いろいろと考えた結果、やはり退職をしたい」のように、抽象的な内容にするのがおすすめです。
伝え方の例
▼別部署への異動を提案されたタイミング
「そのようなご提案をしてくださり、ありがとうございます。しっかりと検討したいので、少しお時間をいただけないでしょうか」
▼数日後
「検討したのですが、いろいろと考えた結果、やはり退職したいと考えています」
【パターン3】退職手続き自体が進まない
上司に退職意志を伝えたものの話が進まない場合は、上司の状況を見つつ1週間を目処に進捗状況を確認するようにしましょう。
申し訳なさや引け目を感じるかもしれませんが、無事退職日を迎えるためには、自分から行動を起こすことも大切。進捗状況を確認する際は、下記の例文を参考にしてください。
伝え方の例
「先日ご相談した退職の件につきまして、その後いかがでしょうか。引き継ぎが遅れて皆さんにご迷惑をおかけするのは心苦しいため、◯日までにご回答いただけると幸いです」
キャリアアドバイザーより
退職手続きを粘り強く依頼しても話が進まない場合は、メールで退職届を送ったり、直接人事に相談したりして手続きを進めることもやむを得ないでしょう。
最終手段として、労働基準監督署に相談することもできます。どのような引き止めを受けていても退職できない職場はないため、安心して対応してください。
「退職日を後ろ倒しにしてほしい」と言われた場合は?
業務の都合などで退職日を後ろ倒しにしてほしいと言われた場合でも、基本的に入社日は変更できないと考えるのが無難です。転職先は入社日ありきで内定を出している可能性もあるため、内定後に入社日の調整をお願いすると印象が悪化してしまうリスクがあります。
そのため、上司に対して転職先への入社日が決まっており、退職日を調整できないことを伝えるようにしましょう。
伝え方の例
「大変申し訳ないのですが、次の職場には◯月に入社予定のため、それまでに退職したいと考えています。引き継ぎはしっかりと行いますので、ご理解いただけないでしょうか」
なお、どうしても退職日の調整が難しい場合は入社日を調整できることもあります。下記の記事で入社日を調整できる可能性があるケースと具体的な相談方法をまとめているので、参考にしてください。
監修者
- 宮原 泰成
- 株式会社クイック キャリアアドバイザー
施工管理をはじめとした、建設業界専門のキャリアアドバイザー。特に関西エリアの転職支援に強みがあり、大手から中小・ベンチャーまで幅広い企業で実績を築いている。チームマネージャーを務めており、建設業界全体の動向はもちろん、各企業の採用動向や事業戦略にも精通している。
キャリアアドバイザーより
知っておいていただきたいのは、退職を一切引き止められない施工管理はほぼいないということ。
このため、退職は引き止められるものだと認識して冷静に対応することが大切です。そのうえで、強い引き止めにあわないための工夫ができるといいでしょう。