建設業許可を受けるために、配置が必要な専任技術者。専任技術者の要件を、一般建設業・特定建設業に分けてくわしく解説します。
専任技術者とは?
建設業許可に必要な技術者のこと
専任技術者とは、工事の請負契約を適切な内容で結び、その工事を契約通りに実行するための役割を担う技術者のことです。
具体的な業務内容は、見積もりの作成や契約の締結関連手続き、注文者とのやりとりなど。営業所に常駐する必要があるため、工事現場に出ることはないのが基本です。
なお、建設業法では営業所ごとに専任技術者の配置が義務づけられているため、専任技術者がいなければ建設業許可を受けることはできません。
また、許可を受けた時点では専任技術者を配置していたとしても、退職などでポストが空いてしまった場合は建設業許可を維持できなくなるため、期間を空けず代わりの人を配置する必要があります。
専任技術者になるための要件
専任技術者として配置するには、つぎの3つの要件をすべて満たす必要があります。
資格または実務経験が必要なのは大前提として、さらにポイントとなるのが常時勤務と専任ができるかどうか。
つぎに当てはまる場合は常時勤務と専任の要件を満たさないと判断されるため、専任技術者として配置することはできません。
- 通勤が困難なほど、居住地と営業所が離れている
- 他の営業所や工事現場で専任の業務に就いている
- アルバイト・パートスタッフである(短期雇用が前提のため)
なお、常時勤務と専任の要件を満たしていれば、出向社員を専任技術者として配置することは可能です。
また、1つの営業所が複数の業種で建設業許可を受ける場合、1人の担当者が複数業種の専任技術者となることはできます。
もちろん、この場合も専任技術者となる複数業種のすべてで資格や実務経験などの条件を満たしておくのが前提です。
有資格者・経験者が不足している場合は…
専任技術者に必要な資格・実務経験
専任技術者に必要な資格と実務経験は、一般建設業と特定建設業どちらの許可を受けるかによって異なります。
一般建設業と特定建設業の違いは、下請契約の金額が一定額以上かどうか。発注者から直接請け負った工事1件につき、4,500万円(建築工事の場合は7,000万円)以上の下請契約を締結する場合は特定建設業の許可、それ以外は一般建設業の許可が必要となります。
一般建設業と特定建設業それぞれの専任技術者にはどのような資格・実務経験が必要なのか、くわしくみていきましょう。
なお、基本的には主任技術者を取得していれば一般建設業の専任技術者、監理技術者を取得していれば特定建設業の専任技術者になることができます。
一般建設業
一般建設業の専任技術者になるための要件は、つぎの通り。どれかひとつを満たしていれば、専任技術者として配置できます。
一般建設業の専任技術者の要件
- 定められた国家資格を持っている
- 指定学科を卒業しており、学歴に応じた実務経験がある
- 10年以上の実務経験がある
1. 定められた国家資格を持っている
1つ目は、許可を受けようとする建設業の種類で定められた国家資格を持っていること。
建設業の種類ごとに必要な国家資格は、つぎの通りです。
一般建設業の専任技術者となることができる国家資格
建設業の種類 | 必要な資格 |
---|---|
土木一式 |
※建設部門、総合技術監理部門(建設/農業-農業土木、農業農村工学/水産-水産土木/森林-森林土木)、農業部門(農業土木/農業農村工学)、水産部門(水産土木)、森林部門(森林土木) |
建築一式 |
|
大工 |
|
左官 |
|
とび・土工 |
※建設部門、総合技術監理部門(建設/農業-農業土木、農業農村工学/水産-水産土木/森林-森林土木)、農業部門(農業土木/農業農村工学)、水産部門(水産土木)、森林部門(森林土木) |
石 |
|
屋根 |
|
電気 |
※建設部門、総合技術監理部門(建設/電気電子)、電気電子部門 |
管 |
※機械部門(流体工学/流体機器/熱工学/熱・動力エネルギー機器)、総合技術監理部門(機械-流体工学/流体機器/熱工学/熱・動力エネルギー機器/上下水道/衛生工学、上下水道部門、衛生工学部門) |
タイル・れんが・ ブロック |
|
鋼構造物 |
※建設部門(鋼構造及びコンクリート)、総合技術監理部門(建設-鋼構造及びコンクリート) |
鉄筋 |
|
舗装 |
※建設部門、総合技術監理部門(建設) |
しゅんせつ |
※建設部門、総合技術監理部門(建設/水産-水産土木)、水産部門(水産土木) |
板金 |
|
ガラス |
|
塗装 |
|
防水 |
|
内装仕上 |
|
機械器具設置 |
※機械部門、総合技術監理部門(機械) |
熱絶縁 |
|
電気通信 |
※電気電子部門、総合技術監理部門(電子電気) |
造園 |
※建設部門、総合技術監理部門(建設/森林-林業、林業・林産、森林土木)、森林部門(林業/林業・林産/森林土木) |
さく井 |
※上下水道部門(上水道及び工業用水道)、総合技術監理部門(上下水道-上水道及び工業用水道) |
建具 |
|
水道施設 |
※上下水道部門、総合技術監理部門(上下水道/衛生工学-水質管理、廃棄物管理、廃棄物・資源循環)、衛生工学部門(水質管理/廃棄物管理/廃棄物・資源循環) |
消防施設 |
|
清掃施設 |
※衛生工学部門(廃棄物管理/廃棄物・資源循環)、総合技術監理部門(衛生工学-廃棄物管理、廃棄物・資源循環) |
解体 |
※建設部門、総合技術監理部門(建設) |
参考:国土交通省「営業所専任技術者となり得る国家資格等一覧」
なお、資格で申請する場合と異なり、実務経験のみで申請する場合は、経験を証明する工事資料や企業の在籍証明など多くの資料が必要となります。
このため、国家資格と実務経験どちらの条件も満たすのであれば、資格で申請するのが得策でしょう。
2. 指定学科を卒業しており、学歴に応じた実務経験がある
2つ目は、指定学科を卒業しており、許可を受けようとする建設業の種類で学歴に応じた実務経験があること。
必要な実務経験年数は、高卒なら5年以上で、大卒なら3年以上、専門学校卒(※)なら5年以上。指定学科は、建設業の種類によって異なります。くわしくは国土交通省「指定学科一覧」を参考にしてください。
なお、実務経験とは建設工事の施工に直接関わる経験すべてのことを指します。営業や事務など建設工事に関係のない業務は実務経験に含まれないので、注意してください。
※専門学校卒でも、専門士もしくは高度専門士であれば3年以上の実務経験でかまいません。
実務経験の数え方をくわしく解説!
3. 10年以上の実務経験がある
3つ目は、許可を受けようとする建設業の種類で10年以上の実務経験があること。
指定学科を卒業していない場合でも、10年以上の実務経験があれば一般建設業の専任技術者として申請することが可能です。
特定建設業
特定建設業の専任技術者になるための要件は、つぎの通り。どれかひとつを満たしていれば、専任技術者として配置できます。
特定建設業の専任技術者の要件
- 定められた国家資格を持っている
- 一般建設業の要件を満たし、2年以上の指導監督的経験がある
1. 定められた国家資格を持っている
1つ目は、許可を受けようとする建設業の種類で定められた国家資格を持っていること。
建設業の種類ごとに必要な国家資格は、つぎの通りです。
特定建設業の専任技術者となることができる国家資格
建設業の種類 | 必要な資格 |
---|---|
土木一式 |
※建設部門、総合技術監理部門(建設/農業-農業土木、農業農村工学/水産-水産土木/森林-森林土木)、農業部門(農業土木/農業農村工学)、水産部門(水産土木)、森林部門(森林土木) |
建築一式 |
|
大工 |
|
左官 |
|
とび・土工 |
※建設部門、総合技術監理部門(建設/農業-農業土木、農業農村工学/水産-水産土木/森林-森林土木)、農業部門(農業土木/農業農村工学)、水産部門(水産土木)、森林部門(森林土木) |
石 |
|
屋根 |
|
電気 |
※建設部門、総合技術監理部門(建設/電気電子)、電気電子部門 |
管 |
※機械部門(流体工学/流体機器/熱工学/熱・動力エネルギー機器)、総合技術監理部門(機械-流体工学/流体機器/熱工学/熱・動力エネルギー機器/上下水道/衛生工学、上下水道部門、衛生工学部門 |
タイル・れんが・ ブロック |
|
鋼構造物 |
※建設部門(鋼構造及びコンクリート)、総合技術監理部門(建設-鋼構造及びコンクリート) |
鉄筋 |
|
舗装 |
※建設部門、総合技術監理部門(建設) |
しゅんせつ |
※建設部門、総合技術監理部門(建設/水産-水産土木)、水産部門(水産土木) |
板金 |
|
ガラス |
|
塗装 |
|
防水 |
|
内装仕上 |
|
機械器具設置 |
※機械部門、総合技術監理部門(機械) |
熱絶縁 |
|
電気通信 |
※電気電子部門、総合技術監理部門(電子電気) |
造園 |
※建設部門、総合技術監理部門(建設/森林-林業、林業・林産、森林土木)、森林部門(林業/林業・林産/森林土木) |
さく井 |
※上下水道部門(上水道及び工業用水道)、総合技術監理部門(上下水道-上水道及び工業用水道) |
建具 |
|
水道施設 |
※上下水道部門、総合技術監理部門(上下水道/衛生工学-水質管理、廃棄物管理、廃棄物・資源循環)、衛生工学部門(水質管理/廃棄物管理/廃棄物・資源循環) |
清掃施設 |
※衛生工学部門(廃棄物管理/廃棄物・資源循環)、総合技術監理部門(衛生工学-廃棄物管理、廃棄物・資源循環) |
解体 |
※建設部門、総合技術監理部門(建設) |
参考:国土交通省「営業所専任技術者となり得る国家資格等一覧」
なお、資格で申請する場合と異なり、実務経験のみで申請する場合は、経験を証明する工事資料や企業の在籍証明など多くの資料が必要となります。
このため、国家資格と実務経験どちらの条件も満たすのであれば、資格で申請するのが得策でしょう。
2. 一般建設業の要件を満たし、2年以上の指導監督的経験がある
2つ目は、一般建設業の専任技術者要件を満たしたうえで、許可を受けようとする建設業の種類で請負金額4,500万円以上の指導監督的経験が2年以上あること。
なお、指導監督的経験とは、現場代理人・主任技術者・工事主任・設計監理者・施工監督などとして、部下や下請けに対し工事の技術面を総合的に指導監督した経験のことを指します。
専任技術者と主任技術者は兼任できるケースもある
専任技術者は営業所の専任である必要があるため、工事現場での専任が義務づけられている主任技術者や監理技術者との兼任は基本的に認められていません。
しかし、つぎの要件を満たす場合は、例外的に専任技術者と主任技術者を兼任できるため、有資格者が不足している場合は参考にしてみてください。
参考:国土交通省「営業所における専任の技術者の取扱いについて」
なお、専任技術者は出向社員を配置できるケースもありますが、主任技術者は請負企業と直接的で恒常的な雇用契約が求められるため、企業に属する社員でないと兼任はできません。
(公開:2021年10月20日/最終更新:2023年9月25日)
(セコカンプラス編集部)