新型コロナウイルスの影響を受け、2020年度は業界を問わず経営状況が悪化する企業が目立つ1年となりました。
建設業界も民間工事を中心に需要が落ち込みましたが、このような状況に逆行して増収増益となったゼネコンはあるのでしょうか。決算短信や電子公告などで業績を公表している20社を対象に調査しました。
増収増益のゼネコンは3社
セコカンプラス編集部がゼネコン20社の決算情報を調査したところ、増収増益となったのは20社中3社のみという結果になりました。
増収増益となったのは、売上高ランキング7位の前田建設工業、9位の熊谷組、17位の福田組の3社です。
※各社の決算資料をもとに作成
スーパーゼネコンが軒並み減収減益に苦しむなか、どのようにして業績を伸ばしたのでしょうか。1社ずつ、くわしく見ていきましょう。
前田建設工業|前田道路の子会社化が影響
まずは、売上高が6,781億円で前年比39.0%増、営業利益が463億円で36.1%増となった前田建設工業です。
前田建設工業の直近5年間の業績をまとめたところ、2016~2019年度は売上高4,000億円台を推移していましたが、2020年度は一気に6,000億円台まで増加していることがわかりました。
2020年度に業績が伸びた一番の要因は、2020年3月にグループ会社の前田道路を連結子会社化したため。これまで計上していなかった前田道路の売上高や営業利益が前田建設工業の業績に上乗せされるようになったことが、今回の増収増益につながりました。
なお、前田建設工業単体の売上高は前年比5.5%減、営業利益は0.7%増となっています。
熊谷組|建築事業が牽引
続いては、売上高が4,502億円で前年比3.2%増、営業利益が281億円で前年比10.3%増となった熊谷組です。
熊谷組の売上高は5年連続で増加しています。2020年度は特に建築事業が牽引して売り上げが拡大。利益率は土木・建築ともに改善しています。
現在熊谷組は、2021~2023年度の中期経営計画で「建設請負事業の深化」を柱のひとつに掲げており、国内土木・国内建築とともに海外建築の事業拡大にも力を入れていく方針。中期経営計画の最終年度である2023年には、売上高4,700億円の達成を目指しています。
福田組|子会社の福田道路が好調
最後は、売上高が1,858億円で前年比2.0%増、営業利益が89億円で10.6%増となった福田組です。
福田組はこの5年間で大幅な伸びこそないものの、堅実に売り上げと利益を確保。2020年度は福田組単体の売り上げが減少しましたが、福田道路など子会社の売り上げが伸びてマイナス分をカバーしました。
なお、2021年度は受注減に加え働き方改革への投資を予定しているため、減収減益となる予想。2019年に始動した中期経営計画の最終年度ではありますが、業績目標は下方修正を行っています。
(セコカンプラス編集部)