世間では「物価は上がっているのに給料は変わらない」といった声を耳にすることもありますが、ゼネコンで働く従業員の年収も世間の声と同じく変わっていないのでしょうか。
大手ゼネコン19社(※)を対象に直近10年間の平均年収を調査し、増加額が多いゼネコンランキングを作成しました。この記事では、10年間で特に年収が増えたゼネコンがどこかと、各社の年収が10年間でどのように変動したのかを紹介しています。
※2012~2021年度の有価証券報告書を確認できたゼネコンを調査対象としています。
年収の増加額ランキング
まずは、ゼネコン19社の平均年収が直近の10年間でどのくらい増えたのかをランキング形式で一挙にご紹介します。
各社の2012~2021年度の有価証券報告書をもとに作成。2013年発足の安藤ハザマは2012年度のデータがないため調査対象外としています。
最も年収が上がったのは淺沼組
ゼネコン19社のなかで、最も年収が上がったのは淺沼組です。2012年度の平均年収は554万円だったのに対し、2021年度は847万円で293万円増加しました。
2番目は三井住友建設で257万円のアップ。3番目は熊谷組で254万円のアップとなっています。
反対に、最も上がり幅が小さかったのは東急建設で増加額は73万円。なお、今回調査対象としたゼネコンのなかで、2012年度と比べて平均年収が下がった企業はありませんでした。
19社の平均増加額は189万円
ゼネコン19社の年収を集計したところ、2012年度と比べたときの平均増加額は189万円でした。
世間では「給料が上がらない」という声を耳にすることも少なくありませんが、今回調査した大手ゼネコンの平均年収(全従業員の平均)に限っていうと、着実に増加していることがわかります。
年収が上がった要因は?
ゼネコン各社の年収を引き上げた要因のひとつとして考えられるのが、建設業界の活況です。
今回調査対象とした大手ゼネコン19社の売上高を集計して年度ごとに合算したところ、10年間で2.6兆円増加しているという結果になりました。2012年度は19社の合計売上高が10.2兆円だったのに対し、2021年度は12.8兆円に拡大しています。
この10年間を振り返ってみると、東日本大震災後の復興需要や東京オリンピック・パラリンピックに向けた建設ラッシュなどで、ゼネコン各社の受注が好調だったことが思い出されます。
こうした状況下で業績が伸びた企業では、特に年収が上がりやすかった可能性があると考えられるでしょう。
定期的なベースアップも年収増を後押し
さらに、ゼネコン各社では定期的にベースアップが実施されていることも、平均年収がアップした要因のひとつだと考えられます。
2022年の春季労使交渉では、日本建設産業職員労働組合協議会(日建協)に加盟するゼネコン35社のうち、24社がベースアップを決定したとのこと。
2022年4月以降の工事では、賃上げを行った企業に対して入札時に加点が行われるようになったため、今後のさらなるベースアップにも期待がかかっています。
各社の年収推移の実態
ここからは、ゼネコン19社をスーパー・準大手・中堅の3つに区分(※)し、各社の平均年収が10年間でどう変動したのかを見ていきましょう。
各企業の区分は下記のとおりです。
スーパーゼネコン
鹿島建設・大林組・竹中工務店・清水建設・大成建設
準大手ゼネコン
長谷工コーポレーション・戸田建設・三井住友建設・五洋建設・熊谷組・西松建設
中堅ゼネコン
東亜建設工業・奥村組・淺沼組・東洋建設・飛島建設・福田組・大豊建設・東急建設
※2021年度の売上高が1兆円以上の企業をスーパーゼネコン、3,000億円以上の企業を準大手ゼネコン、3,000億円未満の企業を中堅ゼネコンに分類しています。
スーパーゼネコン
スーパーゼネコン5社の年収推移を見てみると、2016年度までは大きな差がありませんでしたが、その後は企業によってバラつきが出ていることがわかりました。
2017年度以降は、鹿島建設がトップを独走。5年連続で1,100万円を超えており、1,000万円前後を推移しているほかの4社と差をつけています。
準大手ゼネコン
準大手ゼネコン6社の年収推移を見てみると、全体としてなだらかな右肩上がりになっていることがわかりました。
10年連続で準大手ゼネコンのトップに君臨しているのは長谷工コーポレーション。2番目は戸田建設と五洋建設が年度によって入れ替わっている状況です。
中堅ゼネコン
中堅ゼネコン8社の平均年収を見てみると、平均年収の変動にはバラつきがあり、乱高下している企業もあるのがわかります。
堅調に増加しているのは、ランキングでトップだった淺沼組に加え、東亜建設工業・東洋建設・飛島建設です。
東急建設の平均年収は一時900万円を超えたものの、2020年度以降は急落。福田組の平均年収は、2016年度のピークを境に減少傾向となっています。
スーパーゼネコンの年収はあまり上がっていない?
再び全体の年収増加額ランキングに目を向けると、スーパーゼネコンは平均年収こそ高いものの、増加額ではランキングの下位に集中していることが見てとれます。
鹿島建設は4位に位置していますが、大林組は14位で、竹中工務店・清水建設・大成建設は16~18位でした。
そこでスーパー・準大手・中堅の区分でそれぞれの平均増加額を調査したところ、最も年収が上がっていたのは中堅ゼネコンで、2番目は準大手ゼネコンという結果になりました。
スーパーゼネコンの増加額は、中堅・準大手ゼネコンと比べて50万円以上少ない147万円となっています。
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(セコカンプラス編集部)