何が変わった?改正建設業法|2020年10月の改正ポイント

更新日

2020年10月に施行された改正建設業法では、長時間労働の是正や下請の負担軽減などを実現するための改正が行われました。

企業に関係するもの/行政機関に関係するものの両面に改正が入りましたが、この記事では主に企業に関係する改正点をご紹介します。

この記事のポイント

  • 企業側に関係する改正のポイントは10種類
  • 発注・受注に関する改正のほか、会社設立・合併に関する改正が入った
  • 全体的に、下請業者を守るための緩和・規制が多い

改正建設業法、変更のポイント

2020年10月の改正建設業法の変更点のうち、企業に関係するポイントは次の通りです。

  • 「発注側・受注側両方」に関係があるもの
    (1)「工事を施工しない日・時間帯」を定める場合、契約書面に明記することを義務化。
  • 「発注側」に関係があるもの
    (2)著しく短い工期での請負契約を禁止。
    (3)工期等に影響を及ぼす事象の、事前の情報提供を義務化。
    (4)下請代金のうち「労務費相当分」の現金払いを義務化。
    (5)違反行為を報告した際の、下請への不利益な取り扱いを禁止。
    (6)監理技術者が、複数現場を兼任可能に。
  • 「受注側」に関係があるもの
    (7)工程の細目を明らかにして工事の見積もりを行う努力義務を新設。
    (8)下請業者の「建設業許可証」の掲示義務を緩和。
  • 「会社設立・合併・事業譲渡等」に関係するもの
    (9)建設業の許可基準を緩和。
    (10)合併・事業譲渡等に際して、空白期間なく事業承継可能に。

「発注側・受注側両方」に関係があるもの

「発注側・受注側両方」の改正ポイント 1. 「工事を施工しない日・時間帯」を定める場合、契約書面に明記することを義務化

ポイント(1)
改正建設業法の第19条で、請負契約で「工事を施工しない日、または時間帯」を定める場合には、契約書面に明記することが義務化されました。発注側・受注側どちらの立場であっても義務があるため、新たに契約書を作成する場合には記載漏れに注意しましょう。

「発注側」に関係があるもの

「発注側」の改正ポイント 2. 著しく短い工期での請負契約を禁止 3. 工期等に影響を及ぼす事象の、事前の情報提供を義務化 4. 下請代金のうち「労務費相当分」の現金払いを義務化 5. 違反行為を報告した際の、下請への不利益な取り扱いを禁止 6. 監理技術者が、複数現場を兼任可能に

工期設定に関する改正

ポイント(2)
長時間労働の是正に向け、建設工事に通常必要と認められる期間に比べて著しく短い期間を工期とする請負契約が禁止されました。

具体的な工期日数の目安はありませんが、降雨・降雪などの自然要因や、休日の確保、準備・後片付けなど、さまざまな要因に基づいて適切に工期設定することが明文化されています。

参考:国土交通省 中央建設業審議会「工期に関する基準(PDF)

ポイント(3)
工事現場での手戻りを減少させるため、想定されるリスクなどの情報を事前提供することも義務化されました。地中の状況や、近隣対応・騒音振動といった周辺環境に関する情報など、発注者が承知している情報を共有することが求められています。

現場側の処遇改善

現場側の処遇を改善するための改正も2点行われています。

ポイント(4)
下請代金のうち、労務費相当分の現金払いが義務化されました。現金を手渡しする方法のほか、銀行振込・銀行振出小切手のいずれかの方法で支払うようにしてください。

ポイント(5)
下請業者が元請の違反行為を報告したことを理由に、下請へ不利益な取り扱いを行うことも禁止されました。不当に低い金額での発注や、下請代金の期限内の支払い義務違反、使用資材の購入強制などが禁止されています。

人材不足への対応

ポイント(6)
人材不足対策として、監理技術者が複数現場を兼任可能になりました。監理技術者補佐を専任で設置するという条件はありますが、複数現場の兼任が可能になることで、監理技術者の確保に悩んでいた元請業者の負担軽減が期待されています。

関連記事

「受注側」に関係があるもの

「受注側」の改正ポイント 7. 工程の細目を明らかにして「建設工事の見積もり」を行う努力義務を新設 8. 下請業者の「建設業許可賞」の掲示義務を緩和

受注者による工期ダンピングの禁止

ポイント(7)
今回の改正では、作業・準備など工程の細目を明らかにした「建設工事の見積もり」を行う努力義務を新設。受注時の過度な工期ダンピングを抑止し、無理な工期での受注を防ぐことで、建設現場の負担軽減を図っています。

「建設業許可証」の掲示義務の緩和

ポイント(8)
建設現場に掲げる建設業許可証の掲示義務を緩和。元請のみ掲示する形になりました。

「会社設立・合併・事業譲渡等」に関係するもの

「会社設立・合併・事業譲渡」の改正ポイント 9. 建設業の許可基準を緩和 10. 合併・事業譲渡等に際して、空白期間なく事業承認可能に

事業者の減少や後継者難によって、地方を中心に事業環境の持続が課題になっています。その解決手段として、今回の大きく分けて2つの改正が行われました。

ポイント(9)
第7条の改正では、建設業許可の際の要件が緩和されました。役員に建設業経営の経験者がいなくても許可を得られるようになり、事業参入のハードルが下がっています。

ポイント(10)
事業を存続しやすい環境の整備の一環として、合併・事業譲渡の円滑化も推進。第17条の2・3で、事前認可を受けることで空白期間なく事業承継できるよう条文が改正されています。

【まとめ】2020年10月の改正内容の一覧

企業に関係する10個の改正点に加え、行政機関に関係するものも要約した一覧表は、次の通りです。

対応する条文の項目も併記してあるので、自社の対応を考える際にお役立てください。

「発注側・受注側両方」に関係があるもの
19条 請負契約の当事者に対し、「工事を施工しない日または時間帯」の定めをする際に、契約書面に明記することを義務化
25条の27 建設業者に対し、建設工事に必要な知識・技術等の向上の努力義務を新設。
27条の40 迅速な災害復旧に向けて、建設業者に対し「地方公共団体等との連携」を努力義務化。
「発注側」に関係があるもの
19条の5 注文者に対し、建設工事に通常必要と認められる期間に比べ、著しく短い期間を工期とする請負契約を禁止
20条の2 注文者に対し、「工期等に影響を及ぼすおそれがある事象」に関する事前の情報提供を義務化
24条の3 元請に対し、下請代金のうち「労務費相当分」を現金払いとすることを義務化
24条の5 「元請が違反行為を行った際に、その事実を下請が報告した」ことを理由とした、下請への不利益な取り扱いを禁止
26条
26条の3
監理技術者補佐を専任で置いた場合、元請の監理技術者の「複数現場の兼任を可能とする」ルールを新設。
「受注側」に関係があるもの
20条 建設業者に対し、工種ごとの作業・準備に必要な日数を明らかにして「建設工事の見積もり」を行う努力義務を新設。
40条 工事現場における、下請業者の「建設業許可証」の掲示義務を緩和
「会社設立・合併・事業譲渡等」に関係するもの
7条 建設業の許可基準から、「5年以上の経験者が役員にいる」ことを必要とする規定を廃止
17条の2
17条の3
合併・事業譲渡等に際し、事前認可を受けることで空白期間なく事業承継することが可能に
行政機関に関係するもの
34条 工期に関する基準を、中央建設業審議会が作成できるルールを新設。
41条の2 建築生産物に不具合が生じた場合、許可行政庁から建設資材製造業者に対して改善勧告等ができる仕組みを構築。

参考出典

(セコカンプラス編集部)

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