2020年10月1日に施行された改正建設業法では、これまで監理技術者を専任で配置する必要があった工事現場(※)でも、兼務が認められるようになりました。
どのような条件を満たせば監理技術者を兼務できるのか、ポイントをわかりやすく解説します。
※公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの(建設業法第二十六条)
監理技術者を兼務するための3つの条件
監理技術者を兼務するために、満たさなければならない条件は次の3つ。それぞれの内容をくわしく解説します。
1. 専任の監理技術者補佐を配置する
1つ目の条件は、監理技術者の業務をサポートする監理技術者補佐を専任で配置することです。
監理技術者補佐とは、改正建設業法の施行に合わせて新設された役職のこと。監理技術者補佐になるための条件は、次の2つです。
監理技術者補佐になるための条件
- 工事現場の業種と同じ1級施工管理技士もしくは1級施工管理技士補(※)の資格を持っている
- 元請の建設業者と3ヶ月以上の直接雇用関係がある
※1級施工管理技士補…2020年3月以降に、1級施工管理技士の第一次検定を合格した人に付与される資格のこと
監理技術者よりも対象者が広く、1級施工管理技士補であれば監理技術者補佐になれるため、1級施工管理技士が不足している企業でも工事の受注をしやすくなったのが大きなメリット。
なお、兼務する監理技術者(特定監理技術者という)と監理技術者補佐の間には、常に連絡がとれる体制をつくっておく必要があります。
2. 他の現場を兼務していない
監理技術者が兼務できる工事現場数の上限は2件のため、まだ他の現場を兼務していないことが2つ目の条件です。
ただし、従来からひとりの監理技術者の配置でかまわないとされていた工期が重複し工作物に一体性がある工事については、複数の請負契約が1つの工事とみなされるので、さらに他の現場を兼務することが可能です。
工期が重複し工作物に一体性がある工事とは
(発注者は、同一又は別々のいずれでも可)
①契約工期の重複する複数の請負契約に係る工事であること
②それぞれの工事の対象となる工作物等に一体性が認められるもの
(当初の請負契約以外の請負契約が、随意契約により締結される場合に限る。)引用:国土交通省 近畿地方整備局「建設業法に基づく適正な施工体制と配置技術者(PDF)」
3. 発注者が定める基準を満たす
3つ目の条件は、発注者が独自に定める基準を満たしていること。改正建設業法では兼務できる現場の内容に関する細かな規定がありませんが、発注者によっては工事現場のエリアや下請金額に制限を設けていることもあるので、あらかじめ確認しておく必要があります。
たとえば、広島市では次のように定められています。
〈例〉広島市が定める基準(抜粋)
- 設計金額(税込)が3億円未満の工事を対象とする。ただし、営繕工事(建物の新築や改修に伴う設備工事を含む。以下同じ。)にあっては、2億円未満を対象とする。
- 監理技術者が兼務できる範囲は、工事相互の間隔(直線距離)が10km以内であること(本市の区域内に限定しない)。
参考:広島市「建設業法改正に伴う監理技術者の専任の緩和について(お知らせ)」
また、基準をクリアしていたとしても兼務には発注者への申請と承諾は必要です。
コラム:そもそも、「専任=常駐」ではない
監理技術者の専任について考えるときに注意したいのが、専任イコール常駐ではないということ。国土交通省の「監理技術者制度運用マニュアル」では次のように定義されており、必ずしも現場への常駐を必要とするものではないと明言されています。
専任とは、他の工事現場に係る職務を兼務せず、常時継続的に当該工事現場に係る職務にのみ従事していること意味するものであり、必ずしも当該工事現場への常駐(現場施工の稼働中、特別の理由がある場合を除き、常時継続的に当該工事現場に滞在していること)を必要とするものではない。
出典:国土交通省「監理技術者制度運用マニュアル(PDF)」
専任とは、あくまで他の現場を担当していない状態のこと。このため、休暇をとるときや会社の研修に参加するときなど、合理的な事情がある場合は監理技術者が現場を離れることも可能となっています。
(セコカンプラス編集部)