施工管理を含め、建設業の仕事は体力的にも精神的にもハードな場面が少なくありません。同僚が一人、また一人と辞めていくのも珍しくはなく、「建設業の離職率は高そう」と感じている方もいるのではないでしょうか。
そこで、厚生労働省が公表している「雇用動向調査」をもとに、建設業の離職率は本当に高いのかを検証。2021年公表の最新データと過去30年の推移をまとめたところ、意外な結果が見えてきました。
【最新】建設業の離職率を他産業と比べると?
2021年に公表された最新データによると、建設業の離職率※は9.5%でした。具体的な数字に換算すると、1年の間で10人に1人程度が会社を辞めているということになります。
10人に1人は十分多い人数ですが、実は全産業のなかで見ると低めの水準。全産業のなかで最も離職率が高い「宿泊業・飲食サービス業」の26.9%と比べると、建設業の離職率は半分以下となっています。
※厚生労働省の「雇用動向調査」では、離職率を離職者数÷1月1日現在の常用労働者数×100(%)で算出しています。
全16産業の離職率をランキング形式でまとめました。
出典:厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果」
全16業種のうち建設業の離職率は11位で、全体平均の14.2%と比べると約5ポイント低い割合となっています。
なお、「宿泊業・飲食サービス業」に次いで2位は「サービス業(他に分類されないもの)※」、3位は「生活関連サービス業・娯楽業」が続いており、サービス関連産業の離職率が特に高いという結果に。
建設業と同じく離職率が10%前後なのは、「学術研究、専門・技術サービス業」「電気・ガス・熱供給・水道業」「製造業」「情報通信業」でした。
※「サービス業(他に分類されないもの)」は、廃棄物処理業・自動車整備業・職業紹介業など、ほかの15分類に該当しないサービスを提供する事業所のことを指す。
参考:総務省「日本標準産業分類」
【過去30年の推移】建設業の離職率は低下傾向
最新データだと建設業の離職率は低めの水準となっていますが、長期的にはどのような傾向が見られるのでしょうか。続いては、建設業の過去30年の離職率を調査してみました。
1991年~2020年の離職率をグラフにまとめたところ、全産業の平均離職率は横ばいが続く一方で、建設業の離職率は全体として右肩下がりとなっており、改善傾向にあることがわかりました。
出典:厚生労働省「雇用動向調査」
2002年は公共投資削減で離職率上昇
建設業の離職率がピークを迎えたのは2002年。当時の離職率は全産業中2位の18.6%で、全体平均の16.6%と比べて2ポイント高くなっています。
2002年は、政府主導で公共投資の削減が行われていた時期。この政策がバブル崩壊の尾を引いていた民間設備投資の縮小と重なり、リストラや倒産といった会社側の都合による離職者が増えたのだと考えられます。
2003年以降の離職率は数ポイント上昇する年もあるものの、常に全体平均を下回る状態をキープ。2015年には離職率10%を切り、その後も一桁台を維持しています。
(セコカンプラス編集部)