大手サブコンから社員10名の会社に転職した施工管理の決断

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大手企業で働いていると「年功序列で給料が上がらない」「意思決定が遅い」といった不満を抱えることも珍しくありません。

とはいえ、勤務先の安定感は捨てがたいもの。踏ん切りがつかず、不満を抱えたまま働き続けている施工管理も多いのではないでしょうか。

そんななか、大手から中小企業への転職を選んだ人がいます。今回お話を伺ったのは、業界を代表する大手サブコンから従業員数10名の会社に転職した設備施工管理のIさん。

なぜ転職の決断をしたのか、理由をくわしく聞いてきました。

話を聞いた人

Iさん(設備施工管理/30代男性/東京勤務)

前職 会社の規模:大手企業、業種:空調設備会社、担当業務:施工管理業務(大手デベロッパーや館長の物件が中心)/現職 会社の規模:中小企業、業種:空調設備会社、担当業務:施工管理業務(中小企業や個人の案件が中心)・顧客開拓・商品について問い合わせなど

転職先選びに失敗しても大丈夫と思っていた

――Iさんは、従業員数2,000名超えの大手サブコンに勤務していたんですよね。

Iさん:そうです。新卒で入社したので、10年以上働いていたことになりますね。最後のほうは、30何万平米を超える超高層ビルの現場で次席を務めていました。中小規模の現場では、代理人の担当経験もあります。

Iさん:そこから転職して、今は従業員数10名ほどの「小さな町の空調屋さん」と呼べるような会社で働いています。

――大手サブコンと町の空調屋さんでは、規模感に大きな差がありますよね。転職に不安はなかったのでしょうか。

Iさん:会社の規模がまったく違うのでもちろん不安はありましたけど、転職先でうまくいかなくても大丈夫と思っていたので踏み切れました。

――うまくいかなくても大丈夫……?

Iさん:もし転職先が潰れたとしても、この業界には戻ってこれるってわかっていたんです。資格を持ってますし、この業界での経験も10年以上あるので。これだけ人がいないって言われている業界だから、まず食いっぱぐれることはないし、また前のような会社に戻れば同じくらいの給料はもらえるはずです。

――人手不足だからこそ、自分の市場価値が高いことを理解していたんですね。

Iさん:前の会社でも出戻り採用を始めたと聞きましたし、どこも本当に人が足りないと感じています。戻るつもりはないですが、「ダメだったら前の会社に戻ればいいや」って感覚だったのでフットワーク軽く転職できました。

働かないおっさんが、俺よりも高給

――そもそも、転職しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

Iさん:経験を積んだことで、大手企業特有の壁にぶつかったんです。ありがちですが、よく働く人もあまり熱心に働かない人も、給料はあまり変わらないじゃないですか。現場で1億、2億の利益を出したとしても、僕の給料はびた一文変わらない。まずはそこが不満でしたね。もちろん、ボーナスが増えたり昇進で有利になったりすることはありますが……。

――建設業界を問わず、実力主義ではない企業で起こってしまう問題ですね。

Iさん:なおかつ社内には同世代がたくさんいるから、出世や昇給はしづらくて。「俺より働いていないおっさんが、年功序列というだけで俺より給料をもらっている」って状況でした。

――つらい状況ですね。とはいえ、年功序列だからこそ待てば出世のチャンスもあるのではとも思います。

Iさん:たしかにそうですが、僕は大手でステップアップすることにおもしろさを見い出せなかったんです。経験を重ねて上司との接点が増えるにつれて、上がどんな仕事をしているのかがわかってきて。

ステップアップして代理人をしていたときも、結局は会社や上司からああだこうだ言われていたんです。責任のある立場にいても、やっぱり羽交い締めにされるんだなと思いました。

知り合いのツテで転職を決意

――目指すものが社内での出世ではなかったんですね。そこからどういった経緯で今の会社に転職したんですか?

Iさん:僕は知り合いのツテで転職しました。「地方の空調会社が拠点を拡大したいから、それを任せられる人を探してる」って話を聞いて。

――なかなか聞かない誘いですね。声をかけられたときの印象はどうでしたか?

Iさん:素直におもしろそうだなって思いました。支店の立ち上げに関わるのも、自分でお客さんを開拓していくのもおもしろそうだなと。あとは「稼いだ分だけ給料を上げる」って言われたのも魅力的でしたね。

転職後は残業ナシでも給料は同額

――ここからは、転職による変化について聞かせてください。いきなりですが、一番気になる給料面の変化はいかがでしょうか。

Iさん:前職と同水準を条件にしていたので、現時点ではほぼ同額です。家族がいるので、給料が下がるなら転職はしませんでした。

――条件を提示したうえでの転職なら安心ですね。

Iさん:前は残業代込みでしたが、今は残業がないので気持ちは全然違いますよ。頑張るほどもらえるので、今後はさらに上げていきたいです。

――残業がなくて給料据え置きなんですか? それはうれしい変化ですね。

Iさん:前職では、一番キツいときだと朝は6時の電車で帰りは終電かタクシーって生活でした。今は毎日子どもを保育園に送ってから出社して、17時か18時には職場を出ています。前は17時に仕事が終わるなんてありえなかったですね。

――家にいられる時間が何倍にも増えたんですね。

Iさん:小さい工事が多くて一日中現場にいることがないからこそ、この時間に帰れます。

転職後は毎日子どもをお風呂に入れられるんですよ。転職当時は妻も不安そうでしたけど、今は「前の会社にいたらこうやって面倒見れなかったよね」って話をしているので、転職してよかったと思ってくれてるんじゃないですかね。

小さな工事ばかりでも不満はない

――小さな工事が多いとのことでしたが、仕事内容は具体的にどう変わりましたか?

Iさん:規模はグッと下がりました。今は個人の家にルームエアコンを付ける仕事とかもしています。

――大規模現場の次席と比べると、ギャップは大きそうです。

Iさん:小さい工事のほうが気持ちは楽です。前は相手にする組織が大きかったので膨大な書類処理が必要でしたが、中小企業が相手の工事はそこまでじゃない。

「じゃあこうやります」って伝えたら工事して完了。面倒な書類がないのはめちゃくちゃスムーズです。

――ここまでお話を伺って、転職の悪かった点が何も出てこない……。後悔したと感じる点があれば伺いたいです。

Iさん:相手にするお客さんの規模が違うので、払える金額にはギャップを感じます。ランニングコストを考えた製品を提案しても、初期投資を抑えるために別の製品を希望されるとか。「将来を考えたらこっちを入れたほうがいいのに」ってモヤモヤしますね。

あとは、会社の社会的信用ですかね。そこはやっぱり大手とは違うなと感じます。でも、現時点では大きな問題じゃないです。

――Iさんが今の生活に満足しているのは、「転職の決断ができたこと」「実力主義の職場を見つけられたこと」が大きそうですね。

Iさん:それは大きいと思います。でも、転職してみないとわからない部分って多いじゃないですか。なので、僕と同じように転職を考えていて、10年以上とかある程度の経験がある人なら、まず動いてみるのもアリかなと思っています。

(セコカンプラス編集部)

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