建設現場は危険と隣り合わせです。厚生労働省の調査によると、建設業における労災事故の死傷者数は年間約1万6,000名で、全9種類の産業(※)のうち、4番目に多いことがわかっています。
実際のところ、事故原因はどのようなものが多いのでしょうか? この記事では、厚生労働省の調査をもとに建設業の事故原因をまとめました。また、夏場に多い熱中症による死傷者の実態についても紹介します。
※「製造業」「鉱業」「建設業」「交通運輸事業」「陸上貨物運送事業」「港湾運送業」「林業」「農業、畜産・水産業」「第三次産業」の9種類。
建設業の事故原因は、墜落・転落が最多
厚生労働省が労働災害による死傷者数についてまとめた調査によると、2021年に建設業で発生した労災のなかで最も多かったのは、墜落・転落で4,869件でした。
次いで多かったのは、はさまれ・巻き込まれの1,676件。僅差で転倒の1,666件が続いています。
労災原因として最も多い墜落・転落の死傷者数が、ほかの災害の死傷者数を大きく上回る結果となりました。仕事柄、高所作業が多い建設業ならではの傾向と言えるでしょう。
出典:厚生労働省「令和3年における労働災害発生状況(確定)」
全産業の傾向と比べると…
建設業の労災原因の1位は墜落・転落でしたが、全産業の労災原因で最も多かったのは転倒で、33,672件でした。次いで墜落・転落が21,286件、動作の反動・無理な動作が20,777件と続いています。
出典:厚生労働省「令和3年における労働災害発生状況(確定)」
全産業の死傷者数のうち、約半数は商業・小売業・保健衛生業(介護など)といった第三次産業の従事者。高所作業や危険物の取り扱いが少ない業種のため、日常的な動作による労働災害件数が多くなっているようです。
死亡者数を見てみると…
死傷者数が9産業中4番目に多かった建設業ですが、死亡者数では建設業が最も多く、2021年は288名が亡くなっていることがわかっています。
事故原因を見てみると、死傷者数と同様に最も多かったのは墜落・転落の110件。次いで多い崩壊・倒壊の4倍近い数にのぼることがわかりました。
出典:厚生労働省「令和3年における労働災害発生状況(確定)」
死亡者数が多い墜落・転落ですが、その死傷の原因は、頭部などの直接的な損傷のほか、安全帯による内臓の損傷や胸部の圧迫といったものも挙げられるとのこと。
高所作業時の墜落制止用器具(旧:安全帯)が2022年以降は原則としてフルハーネス型になったのも、通常のハーネスと同じく直接的な損傷を防ぎつつ、安全帯による損傷も回避するという背景があるようです。
熱中症も、建設業は特に多い…
近年は猛暑日が多く、異常な暑さで熱中症の危険を感じている人も多いのではないでしょうか? 実は建設業は職場での熱中症が特に多く、厚生労働省の調査では死傷者数・死亡者数ともに、集計対象となった8産業(※)のなかで最も多いことがわかっています。
同調査によると、2021年の熱中症の死傷者数は128名で、このうち11名が残念ながら亡くなっているとのこと。
製造業の死傷者数が85名で、このうち死者が2名というデータを見ると、いかに建設業が過酷な労働環境なのかがわかります。
※「建設業」「製造業」「運送業」「警備業」「商業」「清掃・と畜業」「農業」「林業」の8産業
出典:厚生労働省「令和3年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(PDF)」
建設業の場合、屋外作業の多さや現場での水分補給が難しいことが、死傷者数の増加に繋がっていると考えられます。また、体調不良を訴えた人を休憩させたとしても、周囲の目が届いていない間に容体が悪化したケースも報告されているとのことです。
熱中症を防ぐには、こまめに水分や塩分を補給するだけではなく、定期的な体調チェック・見回りも重要と言えるでしょう。
(セコカンプラス編集部)