【2021年度振り返り】施工管理の転職市場レポート

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2021年度、施工管理の中途採用はどのような状況だったのかを、施工管理専門のキャリアアドバイザー・窪田氏とともに振り返ります。

本記事では特に採用が活発化した業種・職種についても紹介。2022年度の採用動向予測もまとめました。

【2021年度】企業の採用意欲は回復傾向

前年度(2020年度)は、新型コロナウイルスの影響で中途採用数を減らす企業も少なくありませんでしたが、2021年度の施工管理中途採用動向はどのような状況だったのでしょうか。

施工管理専門のキャリアアドバイザー・窪田氏は、2021年度を「前年度の反動もあり、今年度の施工管理の中途採用数はコロナ前の水準以上に回復した」と振り返ります。

厚生労働省が公表している「一般職業紹介状況」によると、直近5年間の建築・土木・測量技術者※の有効求人倍率は6倍前後を推移。2020年は若干ダウンしたものの、2021年は6.10倍と例年通りの水準となりました。

※建築・土木・測量技術者とは、建築工事の施工管理・設計士・設計技術者、土木工事の施工管理・設計技術者、測量士などのことを指します。

有効求人倍率の推移 2017年度:全体 1.27倍、建築・土木・測量技術者 5.61倍/2018年度:全体 1.41倍、建築・土木・測量技術者 6.18倍/2019年度:全体 1.42倍、建築・土木・測量技術者 6.69倍/2020年度:全体 1.07倍、建築・土木・測量技術者 5.94倍/2021年度:全体 1.06倍、建築・土木・測量技術者 6.10倍

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況|有効求人倍率(パート除く常用)

一方、2021年の全職業における有効求人倍率は1.06倍となりました。直近5年間は1倍前後と低空飛行が続いており、建築・土木・測量技術者とは大きな差が。「ここ数年を通して、施工管理の中途採用はほかの職種と比べて活発な状況」(窪田氏)であることが伺えます。

採用が活発なのは、残業規制に備えるため

施工管理の中途採用が活発なのは、2024年4月から適用される残業時間の上限規制が要因のひとつ。「以前から規制がはじまることはわかっていたが、特に対策をしていない企業もあった。2024年が目前に迫ってきたことで、現在はこうした企業も長時間労働の改善に動き始めている」と窪田氏は説明します。

2024年4月から適用される残業時間の上限規制とは、これまで残業規制の対象外だった建設業でも、従業員が残業時間の上限(原則は月45時間/年360時間)を超えて労働すると、企業が罰則を受けるようになる※というもの。

残業時間削減のため、適切な工期設定やICTツールの導入といった改革に加え、人員を増やして一人あたりの残業時間を減らすことも重要視されており、中途採用を強化する企業が増加しています。

※臨時的で特別な事情があり労使が合意した場合は、残業時間の上限が年720時間以内(時間外労働のみ)、月100時間未満(時間外労働と休日出勤の合計)に緩和されます(特別条項)。複数月にわたり月45時間を超える場合は、ひと月あたりの平均時間が80時間未満などといった細かな規制もあるため、くわしくは厚生労働省「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱(PDF)」をご確認ください。

特に採用が活発化した分野は?

このように施工管理は業種・職種を問わずニーズが高い状況が続いていますが、なかでも2021年に採用が活発化したのはハウスメーカー。「リモートワークの影響で郊外に家を建てる人が増えたことにともない、ハウスメーカーで建築施工管理のニーズが増している」(窪田氏)状況です。

国土交通省調査の「建築着工統計調査」によると、2021年の新設住宅戸数は前年比5%増の85.6万戸。増加に転じたのは5年ぶりで、特に持ち家の建設戸数が増えました

新設住宅数の推移 2017年 96.5万戸/2018年 94.2万戸/2019年 90.5万戸/2020年 81.5万戸/2021年 85.6万戸

出典:国土交通省「建築着工統計調査

施工管理の中途採用では有資格者が求められることが多いものの、「ハウスメーカーの施工管理は、経験が浅い方や資格をお持ちでない方の採用も珍しくない」と窪田氏。異業種からハウスメーカーへの転職事例も生まれていると言います。

ハウスメーカーのほか、これまで企画開発をメインに手掛けてきたデベロッパーが自社で建築施工管理を確保しようと中途採用を強化する動きも。建築施工管理以外では、ITベンダーや通信事業者などがデータセンターの増設を進めているのにともない、電気工事施工管理のニーズが増加しました。

【2022年度】施工管理の転職市場予測

2022年度の施工管理中途採用は、引き続き活発となる見通し。2021年度と同じく残業規制に向けた採用や、充足していないポジションの採用などが進んでいくでしょう

大手ゼネコンでは資材価格の高騰や受注競争の激化などの影響で利益率が悪化している企業もありますが、現時点では「工事需要自体には大きな変化がないため、業績悪化を理由に採用を縮小する動きは見られない」(窪田氏)様子。業界・職種を問わず、2021年度も施工管理の引き合いが強い状態が続く予想です。

残業時間の上限規制適用を前に、「残業代が減るのなら、就業環境がいい企業に転職したい」と転職活動をはじめる施工管理も増えてきました。年度が変わるこのタイミングで、自分のキャリアを見つめ直してみてもいいかもしれません。

窪田 祐介
株式会社クイック キャリアアドバイザー
施工管理を含む、建設業界専門のキャリアアドバイザー。特に関西エリアの転職支援に強みがあり、これまでに支援した人数は1,000名を超える。現在はチームマネージャーを務めており、施工管理の転職市場に関して幅広い知見を持つ。

(セコカンプラス編集部)

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